2012-01-01から1年間の記事一覧

しばらく読んだ本の感想を書くのをサボっていたのでまとめて書く。 ジョン・アップダイク『クーデタ』。ストーリーがどうこうというよりも、文章そのものの流麗な美しさに驚く。ジョン・アップダイクは小説家であるとともに詩人でもあるので、言葉の選び方が…

どうにもイライラしてしまってひとに強く当たったり、過剰なものの言い方をしてしまう。せめて感謝の意を伝える時くらいは笑顔で「ありがとう」と言わなければならんと思っているのに、どうもぎこちなくなってしまう。やけに他人に厳しくなっていてよくない…

久住昌之(原作) 水沢悦子(マンガ)『花のズボラ飯』(2)を読む。この巻もとてもおもしろかった。 この作品は出てくる料理がおいしそうという以上に、主人公の花のリアクションが極端におかしくてつい笑ってしまう。でも、こういうひと実際いる。ぼくはわりと食…

オルハン・パムク『わたしの名は紅』を読む。素晴らしい作品だと思う。ハードカバーで600ページを超える大部の小説だが、あまりのおもしろさに巻を措く能わず読みふけり、あっという間に読了してしまった。 時は西暦1591年。イスラーム暦千年を翌年に控える…

よしながふみ『きのう何食べた?』(5)を読む。いやーおもしろい。よしながふみの作品はどれもおもしろいんだけど、この作品はほんとうにいい。トマトと山芋のみそ汁ってどんな味なんだろう。

アルべルト・モラヴィア『軽蔑』を読む。サルトルは「地獄とは他者である」と言ったが、この作品はまさに他者という地獄を執拗に描き出し、読者を困惑せしめ、陰鬱な気分に叩きこむ。すさまじい。これほど生々しくて苦々しい小説もなかなか無いんじゃないだ…

午前中は台風の影響か気圧の影響か体調が悪かったけれど、午後にはだいぶ持ちなおしてほとんど良くなっている。いろいろなものに興味を取り戻しつつあるし、たぶんもう大丈夫だろうと思う。マンガもいつもどおり読めるようになっている。 器械『アキタランド…

読書家にはふたつのタイプがあると思う。池澤夏樹は「読書というのは癖である、読書癖という性癖である」と言っているのだけれど、これは幼少期から読書家だったひと、なかんずく生まれついて大量の本に囲まれて育ったひとにしか当てはまらないだろう。活字…

メアリー・マッカーシー『アメリカの鳥』を読む。こういうビルドゥングスロマンを読むのもひさしぶりだ。親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしているといった感じの主人公ピーターは、「誰であれ人を手段として利用してはならない」というカントの言葉を…

本屋に行ってマンガを三冊買う。読めるかどうかはわからないけど、昨日よりはだいぶ気分も良くなっている。 クリスタ・ヴォルフ『カッサンドラ』を読む。これは難物だと思う。ヴァージニア・ウルフに影響をうけているそうだけど、ウルフのほうがよっぽど読み…

できれば息抜きにマンガを読みたいのだけれど、気分が憂鬱で暗い本以外は読めない。 こんなときはミステリだと思って、青空文庫の小栗虫太郎『黒死館殺人事件』を読む。オタクっぽい小説でいい。そういう点で言えばメルヴィルの『白鯨』に似ている。 「威風…

ある程度まとまった文章をコンスタントに書こうと思うとたいへんで続かないから、読書日記みたいな感じで読んだ本について思ったことをあまり推敲せずにどんどん書いていこうか。 フランツ・カフカ『失踪者』を読む。 この小説は普通におもしろい。「普通」…

フランツ・カフカ「親友オスカー・ポラックへの手紙 1904年1月27日」

ぼくは、自分を咬んだり、刺したりするような本だけを、読むべきではないかと思っている。もし、ぼくらの読む本が、頭をガツンと一撃してぼくらを目覚めさせてくれないなら、いったい何のためにぼくらは本を読むのか? きみが言うように、ぼくらを幸福にする…

J・M・クッツェー『恥辱』

クッツェーはほんとうにすごいとあらためて思わされた。 老境に差し掛かった男が性欲に振り回されて自分の務めている大学の教え子に手を出した挙句セクハラで訴えられて職を辞するはめになり恥辱を味わう、というあらすじだけを読むと全然おもしろくなさそう…

ドン・デリーロ『ボディ・アーティスト』

ドン・デリーロは描かれる内容自体が巨視的で広大なスケールをもった作品を多く執筆していて、物理的にも枚数が多くて読み切るのに体力がいるけど、この本は比較的こぢんまりとした短編となっていて読みやすい。でも内容は軽くないので、ドン・デリーロ入門…

J.M.クッツェー『石の女』

八十五 どぎついピンクのスリッパをはいて、わたしは台所の床に立つ。つき刺すような鋭い陽の光に目をほそめ。うしろには仄暗い部屋の寝床の安息、目のまえには日課の家事のいらだち。眠気をさそうこの平凡な生活、この無知・無力に鞭打って逆上する娘の脅威…