「冷たい熱帯魚」

冷たい熱帯魚

冷たい熱帯魚

史上に名を残す残虐な犯罪として知られる埼玉愛犬家連続殺人事件をモチーフにした作品ということで、凄惨な映画なのだろうとだいぶ身構えていたのだけれど、なんだこんなものかと拍子抜けしてしまう。

親子の関係、夫婦の関係、暴力と支配、殺人と狂気、あらゆる全てをカリカチュアライズしすぎだと感じる。悪い意味で漫画的だと思う。

登場人物たちがなんとかギリギリ関係性を保っている前半と、それが決定的に壊れてしまった後半で、同じ構図のカットをリフレインし差異を強調する点や、手持ちカメラを随所に使い切迫感と臨場感を煽る演出は見事で、思わず吹き出してしまうほどのセリフまわしの巧みさはコメディとして抜群のおもしろさでもあり、二時間超があっという間ではあるが、しかしおもしろいだけの映画は自分には物足りない。でんでんの怪演が唯一目を引いた。