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スティーブン・ピンカー『言語を生みだす本能』

言語を生みだす本能〈上〉 (NHKブックス)

言語を生みだす本能〈上〉 (NHKブックス)

言語を生みだす本能〈下〉 (NHKブックス)

言語を生みだす本能〈下〉 (NHKブックス)

自分はチョムスキーの理論、なかんずく生成文法については昔から存在自体は知っていたものの、それについて深く知る気が全くなかった。というのも、言語というものは文化的に発生するものであって本能として備わっているものではないという(根拠のない)信念があったからなんだけど、ここ最近いくつか進化生物学の本を読んでそれについて考えなおすようになった。

本書は人間が生まれながらに持つ(書名そのままの)「言語を生みだす本能」についての啓蒙書で、言語学におけるチョムスキー理論を簡単に解説した本と言い切ってしまってもいいだろう。さまざまな事例と研究成果をもとに、脳の中にある「普遍文法」と言語習得のメカニズムについて軽妙に語る。

チョムスキー以前の学説で支配的だった言語的相対論の通説では、言語が思考の認識自体に影響を与えると考えられていたが(サピア・ウォーフの仮説)、ピンカーはこれをぶったぎり本能自体が言語を生み出すのだと言う。おもしろい。おもしろいし、数々の事例も説得的で納得もできる。幼少期に周囲の環境から受けた影響だけでここまで複雑な言語能力が備わる(しかも三年程度で)というのは確かに信じがたく、脳になんらかの言語を生み出す器官があるとしか思えない。が、チョムスキーの理論はもう何十年も議論の的になっているものの決定的な結論が出ているわけではなく、もっと他の本を読んでみる必要があると感じた。