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小田ひで次『拡散』

このエントリは、拡散お願いしますアドベントカレンダー2012の三日目の記事です。

拡散 上 (BEAM COMIX)

拡散 上 (BEAM COMIX)

拡散 下 (BEAM COMIX)

拡散 下 (BEAM COMIX)

『拡散』は、思春期特有の言い知れない焦燥感、不安感、ここから消え去ってしまいたいという気持ちを、身体の物理的な拡散という特異な表現によって描ききった傑作で、アニメーション作品にもなった『ミヨリの森』の作者である小田ひで次の代表作だ。

この作品のすさまじいところは、全二巻とマンガ作品としてはさほど長くないにも関わらず、完結まで六年もかかっているという点にある。それもそのはずで、一読すればすぐにわかるが、狂気すら感じる点描の嵐であり、これほど緻密な絵を描いていればどんなに時間があっても足らなくなるのは火を見るより明らかであるにもかかわらず、小田はなにかにとりつかれたように、偏執的とすらいえる作品を年一作ペースで発表していく。この作品の描き込みは、マンガ表現の一種の極北とすら言っていいだろう。

そんな『拡散』なのだけれど、まず下の画像を見ていただきたい。これは1995年に講談社から出版されたアフタヌーンKCデラックス版の単行本である。判型はA5判で、マンガの単行本としては比較的大きな部類に入る。

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そして次にこちらを見ていただきたい。これは2008年にエンターブレインより出版されたBEAM COMIX版の『拡散』だ。見ればすぐにわかるように、こちらがなんと判型がB6判なのだ。マンガの場合、単行本の判型はオリジナルの原稿に近ければ近いほどいいに決まっているから、BEAM COMIX版がアフタヌーンKCデラックス版よりも劣っているのは自明だ。

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しかし、BEAM COMIX版の『拡散』には、アフタヌーンKCデラックス版には収録されていない短篇が二篇収録されており、それらを読むためにはBEAM COMIX版も買わざるを得ない。しかしかといって、アフタヌーンKCデラックス版の方が判型が大きいから、そちらを処分することもできない。そうすると本棚がその分圧迫され、他の本を置けなくなってしまう。こんな不条理が許されてもいいのか。新装版を出すならせめて前のものより良い物にすべきではないか。この世に神はいないのか。この憤懣やるかたない気持ちを、皆さんに知っていただきたい。拡散していただきたい。そんなことを思いながら、このエントリを書きました。

拡散お願いしますアドベントカレンダー2012の三日目の記事でした。

明日は@shikakunです。