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読書家にはふたつのタイプがあると思う。池澤夏樹は「読書というのは癖である、読書癖という性癖である」と言っているのだけれど、これは幼少期から読書家だったひと、なかんずく生まれついて大量の本に囲まれて育ったひとにしか当てはまらないだろう。活字中毒と言われるひとたちはほとんどがこのタイプだ。これがひとつめ。もうひとつは、何かの出来事によって後天的に読書家になったタイプ。ぼく自身がそうで、具体的には一昨年の年末あたりまで活字の本はほとんど読まなかった。読んでも年に十冊程度。でも、ある出来事があって、堰を切ったようにたくさんの小説を読むようになった。これについては長くなるので、また別の機会に書きたい。

ミルチャ・エリアーデ『マイトレイ』を読む。ルーマニア生まれの白人青年とエキゾチックなインドの美少女。ふたりは偶然をきっかけとして生活を共にしていくなかで自然と惹かれあう。しかし、立場が違う、身分が違う、宗教が違う。立ちはだかる大きな困難を前に情熱的な、あまりにも情熱的な恋の感情がふたりを襲い、苦しめる。懊悩させる。ああ、ロミオ。あなたはどうしてロミオなの? 

言ってしまえば古典的でベタな話だ。しかし、作者自身の実体験を元にしたフィクションなので、率直で胸にせまるものがある。清澄な恋愛の初々しさに心を掴まれる。最初から予告されているとおり、ハッピーエンドではもちろんなくて、読後感は苦い。