「ノーカントリー」

ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

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冒頭の手錠で首を絞めるシーンからにじみ出る異常性や、死体が転がる荒野の不吉な予感を観て、これはすごい!と思ったんだけど、主人公とシガーの追いかけっこになってからはあまり感心しなかった。

救いのない理不尽な暴力を描いた映画としては、ミヒャエル・ハネケの「ファニーゲーム」という傑作がすでにあるので、ふーんという感じだなあ。

エンドロール以外でBGMが一切ないのは私好みである。

「アベンジャーズ」

よくできたキャラクター映画である。各作品のファンなら涙モノだろう。

しかしDCと比べるとマーベルはイロモノ感があるなあ。一番目立ってるのがアイアンマンだし……。

「パシフィック・リム」

パシフィック・リム [Blu-ray]

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莫大な予算をかけて作成した、巨大怪獣と人型ロボのバトル映画。「ゴジラ」のような映画かと思ったら「トップをねらえ!」だった。

どこかで観たようなシーンが矢継ぎ早に展開し、観客が求める映像がひたすらテンポ良く繰り出され、極めて高いOMOTENASHI精神を感じる。お約束だけで構成されているので疑問を差し挟む余地が一切なく、とにかく観客を気持ちよくさせるだけの映画であり、その意味でポルノに近い。「あーおもしろかった」という感想しか残らない。とても清々しい。

ひとつ足りない点を言えば美少女パイロットが出てこないところか(芦田愛菜ちゃんは出てきますが)。次回作は学園ものにした方がよいだろう。

「インセプション」

インセプション [Blu-ray]

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駄作である。「ダークナイト」の監督がこの映画を撮ったとは理解し難い……。

これを褒めている者は黙って三宅乱丈の『ペット』を読め。

「ザ・マスター」

戦争後遺症に苦しみ、アルコールへの逃避を続ける主人公フレディ・クエルは、正常な社会生活を続けることの困難と直面しながら、偶然あるサイコ・セラピストと出会う。彼は周囲から「マスター」と呼ばれており、マスターと支持者たちの小さなコミュニティは一種の新興宗教の様相を呈していた(この辺はサイエントロジーをモデルとしているそうだ)。フレディは非科学的な言動を繰り返すマスターを心のどこかで完全には信じ切れない感情を抱えつつも、自己の暗く淀んだ内面と向き合いながら、マスターと奇妙な相互依存とも言える関係を歩んでいく。

フレディを演じるホアキン・フェニックスの「こいつホントにあたまイッてるんじゃないか」と思わせるほどの怪演もすさまじいが、なんといっても圧倒的な、あまりにも圧倒的な映像の美しさが素晴らしい。最初から最後まで不穏な空気が立ち込め、とてもストレスを感じる物語であるにも関わらず、絵作りがあまりにも巧みで映像にどんどん引き込まれてしまう。

ただ、音楽の使い方が少し引っかかった。ほとんどのシーンでBGMが流れているので緊迫感が薄れてしまう。例えばミヒャエル・ハネケラース・フォン・トリアーがこのテーマで映画を撮っていたら、もっと痛烈な(そしてもっと不快な)作品になっていたのではないかと思う。その辺のバランス感覚の良さがポール・トーマス・アンダーソンが広く支持される理由でもあるのかもしれないが。

フォークナー『死の床に横たわりて』

死の床に横たわりて (講談社文芸文庫)

死の床に横たわりて (講談社文芸文庫)

今となっては、父の口癖だった、「生きてるのは、つまりは、長いあいだじっと死んでいれるようにと準備する為じゃ」という言葉しか思い出せない。が、あの生徒たちと顔をつき合わせてひとりひとりが秘密の利己的な考えをいだき、お互い同士も、また私にとっても無縁の血の流れてる小僧っ子たちと日ごと顔をつき合わせて暮らさねばならず、父のいわゆる死ぬための準備として、これしか道がないことを思うと、そもそも私を生ませた父が憎らしくなってくるのだった。生徒たちが失策をしでかすのが待ち遠しかった。鞭で打ってやれるからだ。鞭がぶちあたる時、それは私の肉にぶちあたるのだった。傷あとがつき、ふくれ上がる時、流れるのは私の血であった。鞭の一打ちごとに、私は思った、さあ、これが私ってものよ、と。今こそ、私ってものが、お前の秘密な利己的な生活の中につき入って、私の血でお前の血の中にいついつまでも痕をつけたのだ、と。

たった一冊の小説が世界を変えるほどの影響力を持つということが現実にあり得る。『百年の孤独』もそのひとつだ。