「ゼロ・ダーク・サーティ」

9・11からウサーマ・ビン・ラーディン暗殺までの、CIAのアフガンでの対テロ活動の暗部を描いたドキュメンタリー風作品。冒頭からリアルで陰惨なアラブ人捕虜の拷問シーンが続き、かなり重苦しい。

CIAによる捕虜の人権を無視した尋問もひどいのだが、捕虜の尋問に失敗すると、度重なるテロが続き犠牲者がどんどん増えていくので、とにかく胃の痛くなる状況が続く。泥沼の対テロ戦争の裏側を説得力のある映像で描いている。

政治的な観点で言えば、そもそもアル=カーイダはソビエトのアフガン侵攻に対抗するためにCIAが主導して武装化させた組織が発展したものだし、ビン・ラーディンが反米に転じたのは、米軍のサウジアラビア駐留に原因があるわけで、9・11が全ての発端であるかのように描いているのは、ちょっと単純化し過ぎだろうとも思う。映画としてはよくできているのだが。