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野尻抱介『ふわふわの泉』

ふわふわの泉 (ハヤカワ文庫JA)

ふわふわの泉 (ハヤカワ文庫JA)

もしも、空気よりも軽くダイヤモンドよりも硬い性質を持った立方晶窒化炭素物質「ふわふわ」が存在したとしたら? という夢のある話を描いた化学SF。作中には出てこないけれど、ものすごく軽いカーボンナノチューブみたいなものかな。

序盤はわりと牧歌的なんだけど、革命的な物質の発見とそれの大量生産によって世界が産業的にも文化的にも根底から塗り替えられていくさまは圧巻。

タイトルは言うまでもなくアーサー・C・クラークの『楽園の泉』のオマージュであり、終盤は軌道エレベータならぬ軌道カタパルトが出てきて、そこに国際政治や環境問題が絡んできて、さらに自己を完全に情報化した異種知性体があらわれて――と、ワンアイディアで巨大なスケールの物語を緻密に描いてみせる手腕はさすがだ。

「ふわふわ」は応用性が非常に高いため、いろいろなものの材質に使えるのだけれど、それがなんだか『家畜人ヤプー』っぽいと思った(ストーリーは似ても似つきませんが)。