スティーヴン・ジェイ・グールド『パンダの親指―進化論再考』

パンダの親指〈上〉―進化論再考 (ハヤカワ文庫NF)

パンダの親指〈上〉―進化論再考 (ハヤカワ文庫NF)

パンダの親指〈下〉―進化論再考 (ハヤカワ文庫NF)

パンダの親指〈下〉―進化論再考 (ハヤカワ文庫NF)

進化論についてのエッセイ集なんだが、一ページに二度も三度も「ダーウィンが」「ダーウィンは」云々と出てきて、なんだか辟易としてしまう。

ぼくはダーウィンがどう言ったかという事に対しては特に興味がなくて、もっと進化生物学の最先端ではこういう興味深い学説があるとか、こういったおもしろいエピソードがあるとか、そういうことを期待してたんだけど、やや肩すかしだった。ダーウィンが偉大なのはよくわかったけど……。

内容自体も古くて、例えば作中ではドーキンスの利己的遺伝子論のバッシングが展開されているんだけど、どうにも的を外しているようにしか見えない。スズメバチやハダカデバネズミなどに見られる真社会性は、ダーウィンの進化論ではうまく説明できないように思うんだけど。

それでも、母体から生まれる前に死んでしまうダニなどのトリビアルなエピソードはおもしろかったし、恐竜の絶滅は生物の歴史から見れば特異な現象ではないという視点など、なるほどたしかにと思わせるものもあった。こういう本でもっと新しいものがあれば読んでみたい。