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貴志祐介『新世界より』

新世界より(上) (講談社文庫)

新世界より(上) (講談社文庫)

新世界より(中) (講談社文庫)

新世界より(中) (講談社文庫)

新世界より(下) (講談社文庫)

新世界より(下) (講談社文庫)


この小説は予定のない日の前日に読み始めた方がいい。あまりにおもしろくて読むのを止められなくなるから。
先入観なしに読んだほうがいいのでくだくだしくストーリーの説明はしないけど、おぞましい描写はこれでもかというほどおぞましく、美しい描写は惚れ惚れするほど美しい。文庫本で千五百ページ近くある大長編なのでいささか怯む向きもあるだろうけど、これくらいのスケールの物語を描こうと思ったらこれくらいの枚数は必要だろう。
辻褄の合わないところやご都合主義的に思える部分もいくつかあるのだけれど、些事にすぎない。むしろ込み入った物語を整然と組み立てる作者の力量には感嘆する他ない。
『黒い家』や『青の炎』もおもしろいけど、この作品の前には霞んでしまう。
作品の雰囲気は清涼院流水の『カーニバル』に近い気がする、と言うと褒めているように聞こえないかもしれないので、伊藤計劃の『ハーモニー』と並ぶディストピアSFの金字塔と言っておこう。一級のエンターテインメント小説です。