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しばらく読んだ本の感想を書くのをサボっていたのでまとめて書く。

ジョン・アップダイク『クーデタ』。ストーリーがどうこうというよりも、文章そのものの流麗な美しさに驚く。ジョン・アップダイクは小説家であるとともに詩人でもあるので、言葉の選び方がとても巧みだ。簡潔で迷いやゆらぎがなく、しかも装飾的でもあって豊か。ちなみに訳者の池澤夏樹も詩人として文学者のキャリアを始めている。ウィットに富んでいて、カート・ヴォネガットに近いものを感じた。

石川雅之『もやしもん』(11)。農大でのミスコンと日本酒造りのエピソードが並行して描かれる。安定しておもしろい。このマンガに出てくる女性(と女装した男性)はみんな自分に自信を持っていて強いので、変にいやらしい感じがしなくていいと思う。下品じゃないというか、健康的。日本酒についてのエピソードをもっと読みたかったんだけど、それは次巻か。

山口貴由『エクゾスカル零』(2)。一巻はなんだこれって感じでちょっとよくわからなかったんだけど、二巻で明確な筋道がついてきた。でも、『覚悟のススメ』のユーモアも『シグルイ』の外連味もいまのところあまり感じないのが正直なところ。

mebae『NONSCALE』。アニメーターでありイラストレーターでもあるmebaeの初の単著。全編マンガの単行本ということで、ちょっと嫌な予感がしていた(アニメーターが描くマンガは、率直に言ってマンガとして出来があまりよくない場合が多い)のだけれど、その心配は杞憂だった。収録作はどれも比較的少ないページの短編なのに、作品ごとに必ずアイディアが入っている。マンガとして読んでおもしろいし、もちろん絵もとてもいい。ぼくがmebaeの作品をはじめてみたのはpixivだったと思うけど、その後に読んだ『AURA~魔竜院光牙最後の闘い~』のイラストでファンになった。マンガもいいけどイラスト集も出版をお願いしたい。

伏見つかさ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(10)。このシリーズももう十巻かと感慨深いものがある。妹とその友人たちに振りかかる困難を兄が奔走してなんとか解決するというのがこの作品の基本的なプロットだけど、この巻では兄が妹たちから世話を焼かれるという逆のパターンになっている。そのため、なんというか、鬱陶しいというか、メインエピソードもストーキング被害に関するもので、あまり愉快なはなしではない。というか、京介氏は実質的に黒猫と付き合ってるようなものなんだから、これ以上人間関係がややこしくなってくると、今後の展開を想像して、ああめんどうくさいなと感じてしまう……。自分自身が黒猫派であやせにはあまり関心がないからそう思うのかもしれないけど。