メアリー・マッカーシー『アメリカの鳥』を読む。こういうビルドゥングスロマンを読むのもひさしぶりだ。親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしているといった感じの主人公ピーターは、「誰であれ人を手段として利用してはならない」というカントの言葉を胸に、理想に燃え、汚れきった社会にひとり立ち向かっていく。清々しい小説だと思う。母親の行き過ぎとも言える保守的な性格もおかしい。小説は最後で現実ではありえない展開をみせるのだけれど、そこがいい。