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クリストフ・シャブテ『ひとりぼっち』

ひとりぼっち (BDコレクション) 

国書刊行会の「BDコレクション」二作目。個人的にシリーズ中で最も好きなのがこの作品だ。

孤島の灯台に毎週食料が届けられる。灯台には陸に一度も降りたことのない一人の男が住んでいるという。容姿があまりにも醜いため見捨てられ、隔離されているのだ。ひとは彼をこう呼ぶ「ひとりぼっち」と。

しかし「ひとりぼっち」は、孤島から出ることもできる。定期的に島へ食料を届けにくる船に乗せてもらえばいいのだ。簡単なことだ。しかし、彼はそれをしようとしない。全ての人間との接触を断ち、小さな水槽の中の一匹の魚と一冊の辞書だけを心の支えに毎日を生きていく。

この作品を非常に印象深いものにしているのは「ひとりぼっち」による辞書遊びだ。辞書を頭の高さから机へ落とし、目をつぶって開かれたページのどこかに指をさし、ランダムに単語を選択する。そして、選択した単語とそれに対する解説からその言葉がどういう事象を表しているのかを想像するのだ。しかし、「ひとりぼっち」は外の世界をしらないため、その想像が微妙に現実とずれている。あたかも子供が大人の世界を想像するように。そこがおかしい。おかしいのだけれど、同時に物悲しくもある。そこが、すばらしい。

絵は白黒がはっきりとしており、描線も直線的だ。『イビクス』と正反対と言ってもいいだろう。絵だけみると日本のマンガと大きく変わらない。辰巳ヨシヒロの影響を受けているようにもみえる。

「ひとりぼっち」は絶対的な孤独の中で辞書遊びを何度も何度も繰り返していく。しかし、ある出来事をきっかけとして、ひとつの決断を下す。その決断がよかったのかどうか誰にもわからない。作品では明確な結論は示されない。だが、人生を生きるということに対する作者の強いメッセージが伝わってくる。