越前魔太郎『魔界探偵 冥王星O ジャンクションのJ』

魔界探偵 冥王星O ジャンクションのJ (講談社ノベルス) 

舞城王太郎原案のライトノベル『魔界探偵 冥王星O』シリーズの六作目。作者は覆面作家越前魔太郎名義となっているけど『サマー/タイム/トラベラー』の新城カズマのようだ。

このシリーズは「電撃文庫MAGAZINE」掲載の『フィータスのF』と続刊の『トイボックスのT』『デッドドールのダブルD』以外は全部読んでるけれど、正直言ってぜんぜんおもしろくない。でもこれはよかった。我慢して読んできた甲斐があった…。

このシリーズの他の作品は基本的にキャラと設定が借り物であとの部分は自分のフィールドで勝負という感じで結果的に作品全体がちぐはぐになっているように思えるのだけれど、この作品はまず文体から舞城王太郎を模倣していて驚く。作品自体がメタ構造になっているのも舞城お得意のやつだ。 まず一度舞城の原案をすべて飲み込んだあと消化して自分自身のエッセンスを付け加えていて舞城小説のようでいてそうではない不思議なおもしろさがある。作者と舞城との格闘を感じる。